「新しい私を照らす光」
社会人2年目 朝倉真琴 ―
2年目に入った社会人生活は、思っていたものと大分違った。
リモートワークも多く、zoom以外で同期と会うことも少ない。
覚える仕事が増え続け、終わらない仕事に追われ続けていて、気持ちに全く余裕がない。
気づけば会社と家の往復で、毎日、部屋で一人で夕食を食べている。最近声を出して笑っていない。
このままでいいのだろうか。この先どうなっていくのだろうか。なんだかとても不安だ。
漠然とした不安と具体的な不安が入り混じって気分が重くなる。そういえば、最近地震が多い。
ニュース速報のほとんどが地震のような気がする。
スマホの地震速報のアラート音に心底震えてしまう。
一人でいると不安がどんどん大きくなる。
この部屋はテレビを消すと自分もいないみたいに真っ暗だ。
急に怖くなって眠れなくなり、
地震に備えて、深夜にネットでランタンを買った。
防災用に何かを買うのは初めてだったけど、
届いてみると思ったより小さくてなんだか可愛い。
何より、頑丈で壊れにくそうなところが
そそっかしい自分にとって頼り甲斐があって良い。
それに、このランタンはすごく明るい。
電気もテレビも消してみると、暖かく雰囲気のある光で落ち着く。全く別の部屋に居るみたいだ。
改めて思えば、就職し上京してから、
あまり外に出ず、ほとんどの時間、この部屋に居る。
ここで働き、ここで休み、この部屋で生きている。
ランタンの光で照らされた部屋は優しい表情で、
大丈夫、頑張ってるよと、見守られているような気持ちになる。
そうかも、頑張ってるかもな、と少しだけ思えた。
環境が変わってから初めて少し前向きな気持ちになれた。
窓からいい風が入ってきて、ランタンを持ってベランダに出た。
狭いベランダの壁がランタンの光で揺らめいていて、癒やされる。
食べかけの夕飯もベランダに持ってきた。
こういうことがしたかったのかもしれない。
ずっとどこかで気になっていた、ソロキャンプについて調べ始めた。
予期せず、相談をしていた大学の先輩のキャンプに同行させてもらう形で、ソロキャンプデビューが叶った。
いつもより早い時間に家を出て、乗ったことの無い路線で行ったことのない土地へ向かう。
電車に揺られながら、改めてスイッチの入った自分の行動力に驚く。
昨日までのルーティンと異なる時間の流れ方から、何かが変わる期待のようなものを感じていた。
深い森林の闇の中で明かりを灯して、美味しいごはんを食べながら、とりとめのない話をする。
こんな贅沢な時間が他にあるだろうか。
自然に囲まれているせいか、
ランタンの優しい明るさのせいか、
ずっと心が開いていて、何年ぶりかに沢山話した。
聞き上手な先輩に甘えて、いっぱい話して、いっぱい笑った。
涙が出るほど笑ったら、暫く涙が止まらなかった。
食事が終わると直ぐに、
先輩たちは自分たちのテントの方に戻って
それぞれの時間を過ごし始めた。
改めて一人になると、
森の暗闇の濃さを再認識して少し緊張したが、
ランタンの優しい明かりに照らされて、心が安らいだ。
本当に自分一人だけの自由な時間を、楽しむことに集中できた。
テントで朝を迎えると、森の中で夜を越した誇らしさや充足感があった。
好きなものを作って、自然の中でゆっくり朝食を食べる。
思い描いていた理想の朝ごはんだ。
食べながらぼんやりと次のキャンプを考える。
どのあたりに向かうか。
どんな準備をしていこうか。
一人で物思いに耽るこういう時間も好きだ。
初体験のキャンプを通じて、
多くの時間自然の中で自分と向き合い
自分らしさを再発見することが出来た。
自分はどんなことが好きで、何に喜びを感じるのか。
好きなことをする大切さ。
素直に自分らしく振る舞うことに心と身体が喜びを感じる。
昨日までの自分と比べて
生きることに強くなった実感があった。
自分らしさを選択する新しい自分に出会うことが出来た。
背中を押してくれたのは、このGENTOSの光だ。
新しい私を照らすGENTOSの光